ラングリッサー3 イメージストーリー リファニー ~草原にて~ さわやかな風が草原をかけぬけ、ふりそそぐ春の陽射しに草花が微笑んでいますわ。 なんてのどかな、ひとときなのでしょう。 こうして目を閉じて立っていると、自分が草原の一本杉になったようで、とってもいい気持ち。 このまま本当の木になれたら、なんて幸せなのでしょう。 ‥‥‥やっぱり、わたくしは、戦いには向かないのでしょうか? お母様はいつも言っていましたわ。 『リファニー、女の子はおしとやかでなければなりません。そして殿方を影から支えてあげるのです』 「はい、お母様」 『殿方は勇ましくもありますが、とても傷つきやすいもの。小鳥に例えるなら、お前は羽を休める梢になってあげなければなりませんよ』 「はい、お母様」 自分が他の女性よりものんびりした性格だということは、重々承知しておりますの。 ですから、私には私に出来ること、「殿方の羽を休める梢になること」を心がけておりますわ。 それでも、戦いになれば、ほかの方よりほんの少しばかり使える魔法で、あの方が有利に戦えるようにして差し上げるのです。 そうですわ。 魔法だけは、わたくしの自慢ですの。 宮廷文官をしていたお父様はわたくしの魔法の才をみつけ、小さな頃から魔導学を学ばせてくれました。 今では感謝しておりますわ、お父様。 でも----、お父様もお母様も、今はラーカシアに捕らえられておりますのね‥‥。 あの日、浮遊城を落とした帝国軍が王都に攻め込み、わたくしが事態を把握できないうちに都を占領してしまいました。 そしてピエールさんの先輩騎士の方が、自分を犠牲にしてわたくし達を逃がしてくれたのです。 王都に捕らえられた方のためにも、わたくし達を逃がしてくれたあの騎士様のためにも、くじけてはいけませんのね。 「‥リ‥‥ニ‥?」 あら?なんでしょう? 「‥リファニー?」 まぁ、この声はディハルトさんですわ‥‥。 いつの間にかやってきたディハルトさんが、わたくしのとなりに腰をおろすのがわかります。 いつもは上から聞こえる彼の声が、今は下から聞こえますわ。 ふふっ。わたくし、本当に高い杉の木になってしまったみたい。 「こんなところで何をしているんだい?」 わたくしは、木ですの‥‥。 木は喋れませんの‥‥。 「のどかで、いい雰囲気だね。ここのところ戦いが激しかったからね、心が安らぐよ」 まぁ、この小鳥は羽を休める梢をお探しですのね。 わたくしでよろしければ、いつでもよろしくてよ。 さぁ、わたくしは草原に生えた一本杉なのです。 「君たちと出会ってからもう、3ヶ月になるんだね」 はい、早いものですわね。 あの時のあなたの勇ましさは、そう、白馬の王子様のようでした‥‥。 ガイエル将軍に追われ、絶体絶命だったわたくしを助けるために、ディハルトさんは戦ってくれましたの。 もし運命の神様がいらっしゃるなら、感謝いたします。わたくしと、彼との出会いを‥‥。 「もうすぐだよ。もうすぐラーカシアだ。飛空艇を使えれば早いけど、あれは目立ちすぎるからな‥‥」 あら、ディハルトさんが立ち上がる気配‥‥。 こちらを向いているみたい‥‥。 「ラフェルを取り戻した。レイモンド卿も助け出せた。後は俺達の両親が待つラーカシアだ」 あぁっ、肩に手が‥‥。 そのまま抱きしめられたら、わたくし、どうしましょう‥‥。 そんな、困りますわ。まだ心の準備が‥‥。 それに、今のわたくしは木ですのよ‥‥。 いきなり告白なんてされたら、わたくし‥‥。 「がんばろうな、もう一息だ。それじゃ、俺は部隊編制の仕事があるから。今の間に充分休んでいてくれ」 困りますわっ! ‥‥‥。 ‥‥‥あら? 「ディハルト‥さん‥‥?」 気がつくと彼の姿はどこにもありませんでした。 「‥‥‥。しかたありませんわ。わたくし、木になっていたんですもの‥‥」 ああ‥。 やわらかなそよ風が、やさしくわたしの肩を抱いていますわ‥‥。 【了】 WRITTENN BY 葉月 陽
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